「…ちょうど昨年の今頃だったよ。保育園から創太くんと手を繋いで出てくる笑顔の芽衣子を見掛けて。創太くんと一緒に歌なんか口ずさんでてさ。職場ではほとんど見たことのなかった芽衣子の笑顔に、俺はたぶんその一瞬で落ちた。まぁその後仕事上での接点しか持てなかった俺が、半年経ってようやく創太くんのおかげで芽衣子に近づけた訳だけど」

照れ臭そうに頭を掻く蒼介さん。

凛子さんの言った通りだった…


私は、あの日。
たまたま創太が蒼介さんにぶつかって夕飯を一緒に食べることになったあの日。
そこから私たちの関係が始まったものだとばかり思っていた。

それがまさか遡ること1年前から、それもやっぱり創太がきっかけで始まっていたなんて…

そんなに前から蒼介さんに想われていたなんて…


嬉しくて、嬉しくて嬉しくて、胸がいっぱいになって、ポロっと涙が溢れた。

今日の私の涙腺は、どうしてか緩いらしい。

「……赤くなったりむくれたり泣いたり、忙しい奴だな」

ふ、と優しく笑って蒼介さんが私の涙を拭ってくれる。


「……私もう、創太に足向けて寝られませんね……」

ふふ、と泣き笑いみたいな顔でそう言うと、

「…あぁ、俺もだな」

とぎゅっと抱き締めてくれた。