…でも、と奈美は続ける。

「進藤は気持ちを伝えないで側にいる選択をしたけど、結局部長が現れて芽衣子のこと取られちゃった。実際はまだ完全に取られた訳ではないんだけど、それで焦って告白した」

芽衣子ももし気持ちを伝えないまま本条さんに取られちゃったらどうする?奈美にそう問われる。後悔しない?と。

もし部長に好きだと言わないまま本条さんと部長が付き合うことになったら、私のこの気持ちは一生部長に伝わることはない。伝えて距離を取られるのと、伝えないで距離ができていくのと、どっちがいいだろうー。

「だから芽衣子、よーく考えな。私はどんな答えを出したとしても芽衣子の味方!」

にかっと笑う。奈美はすごい。1人じゃ見えてこなかった答えが少し見えてきた気がする。奈美の笑顔にホッとした。

「あ、でも進藤にちゃんと返事はしてあげてね」

「…うん」

こんな私のことをずっと好きでいてくれた進藤。気持ちには応えられないけど、きちんと向き合いたい。今すぐには無理でも、できればまた前みたいな関係でいたいと思う。進藤は私にとって大切な友達だから。

「…東」

すると目の前に現れた進藤。びっくりして隣の奈美を見る。

「ちょっとお節介かと思ったけど、進藤呼んでおいたんだ」

私先に戻ってるから、ちゃんと話しな。そう言って奈美は食べかけのサンドイッチとカフェオレを持って去って行った。