「一体何ごとかと思ったよ、突然。私は芽衣子が部長と会ってるのは知ってたし、そうなってもおかしくはないと思ってたけど。でも実際はキスだけだったのね。で、それで意識するようになって遊園地デートの時好きだと自覚したと」

こくん、と頷く。

「部長は抱きしめたりキスしたりしてくるけど好きと言われた訳じゃない、と」

またこくん、と頷く。

「…私は広岡部長って、何とも思ってない人にキスとかするような人だとは思えないけど」

少し言葉を選ぶように奈美は一旦言葉を切る。

「でも芽衣子の過去の恋愛から、男の人の言動を間に受けないって予防線張ってるのは知ってる。だからそこについては軽はずみなことは言えないけど…」
気持ちは伝えてみてもいいんじゃないかな、と奈美は言う。

「芽衣子は気づいてなかったけど、進藤はね、ずっと芽衣子のことが好きだったんだよ。入社前から付き合ってた彼女と別れたのも芽衣子のことを好きになったから」

「…知らなかった…」

本当にに全く気づかなかった。3人でずっと一緒にいて、奈美は気づいたのに私は全く…

「芽衣子は鈍ちんだからなぁ。進藤は今の関係を壊したくなかったから何も言えなかったのよ。側にいられるなら今のままでいいって。東の1番近くにいる男が俺ならそれでいいって。芽衣子の男に対するスタンスも知ってたしね」