顔の火照りが治まったリホは、ふと何かを思い出したかのようにポケットを探った。携帯電話を取り出すと、ナナミに電話をかける。

『はいはーい。なんかあった?』
「ねぇ…花の名前って決めた?」
『決めたよ!塩顔だから“ナカシオさん”!」
「下の名前は?」
『ない。“ナカシオさん”でフルネーム!』
ナナミの独特なセンスにホッとする。私の方がまだ普通なのではないか。

『リホは決めた〜?』
「うん!“ムクチーニ”!!」

またしてもシーンとなる室内。
リホはしばらく姿を消したくなった。まあ、電話だからはじめからナナミには姿は見えていないのだが…

『…そういえば、“ムクちゃん”どうしてる?私はとりあえずナカシオさん庭に植えたけど…』
ナナミはサラッとあだ名をつけた。

リホは、あのナカシオさんがナナミの家の広くて何も無い庭にぽつんと植えられているところを想像して、吹き出さずにはいられなかった。
『うそ〜!普通植えない?元々土から生えてたんだしさ〜』
「いや、いいと思うけど絵ヅラがね」
『ええ〜』

そんな具合でしばらく2人は談笑していた。
リホが母の悲鳴を聞くまでは…