卒業式は午前中に終わって、ここから見える教室には誰もいない。それなのにリオがここにいるのは、きっとわたしと同じ理由なんだろうな、と勝手におもう。


ガシャン、と音を立てて僅かに揺れる白いフェンスに、リオが隣に並んだのがわかった。

ほのかな柔軟剤。そのすこしあまいにおいに、胸が擽ったくなる。


「今日も一緒なんだな」

ふ、と口許をゆるめた矢先。リオの視線は、わたしの首から下げられたカメラへと移された。

「もちろんっ。あたしの相棒だからねー」


高1のとき、誕生日プレゼントとしてリオからもらったこのカメラ。それ以前はカメラにも写真にもこれっぽっちも興味なかったはずなのに、写真を撮るうち、シャッターを切るうちに、気づけばわたしの一部と言っていいほどの存在になった。



「ユナはさ、専門だっけ」

フェンスに両腕を乗せて遠くを眺めているリオに、「そうだよー」と軽く返事をする。

「写真のこと、もっと勉強したいなあって。リオは大学だよね」

確認するように軽く首を傾けると、うん、と彼は白い息を零した。