そこには二重の目を眩しそうに細めた彼が立っていて、軽く眉間にシワを寄せたあと、不服そうに口を開いた。

「用がなきゃ来ちゃいけねーの?」

「もー、そうは言ってないじゃん」

その姿に背を向けて、再びカメラを構えた。


冬の空は驚くほどに移り変わりがはやい。

色も、空気も、雲のかたちも。一度たりとも同じ空はなくて、瞬きしたその瞬間に、もうあたらしい景色が広がっている。


「俺はおまえを探しにきたの」

それからまた何枚かシャッターを切ったところでそんな台詞が飛んできて。

「えっ、そうなの?」と目を丸くすれば、「そーだよ」とさも当たり前のように頷かれる。


「荷物、教室に置きっぱだったけど?」

「…………あ、」

言いながら持ち上げられるふたつのリュック。
見覚えのあるその片割れは、紛れもなくわたしのものだ。


「忘れてたとか言うなよ」

「忘れてた」

へへ、とわらうと、卒業証書しか入っていないそれらは、へにゃりと力なくコンクリート上に置かれた。

それから呆れたような視線を向けられ、ちいさなため息が聞こえたから、思わず。

「だってしょうがないじゃん。教室の窓からすっごいきれいな夕焼け見えたんだもん」


この景色を撮らないわけにはいかないでしょ?って目で訴える。わたしが写真を撮ることがすきだって、リオがいちばん知っているはずだ。