「美穂!今日、ケーキ食べて帰らない?」


私は、就職先をまだ決めていない美穂をデートに誘った。


桃子は、翼先生が好きだということもあって、この専門学校で助手としてバイトすることを目標にしていた。


あゆみは、近所の老人ホームへの就職を希望していた。


決まっていないのは、私と美穂だけ。



「はぁ・・・将来のこと決めるのってなんだか疲れる・・・」


「みんなが決まっていくと余計に焦って、わけわかんなくなる」



私達の専門学校から歩いて5分の有名ケーキ屋さん。


雑誌にも載ったことのあるこのケーキ屋さんのケーキは最高に美味しい。


まだ一度も先生と来たことがないんだけど、いつか絶対食べさせてあげたいな・・・



「おいひ~!」



いちごタルトの好きな私もこのお店では、必ずロールケーキ。


ここのロールケーキは、ほっぺた落ちちゃうくらいに柔らかくて、美味しい。



ふわふわのスポンジの中には、甘すぎないクリームがこれでもか!ってくらいに入ってる。




「私は、タカのお嫁さんでいい・・・」


美穂の彼氏、隆史君・・・通称タカ。


高校時代から付き合っている2人は、ラブラブで、よく校門の前にタカの車が停まっている。


「私も、先生のお嫁さんがいい」



こんな話をしていても、2人とも心の中は・・・『これじゃいけない』ってわかっていた。



だから、辛かった。



決めなきゃ、決めなきゃって焦れば焦るほど、自分のやりたいことが見えなくなっていくようだった。