「それで、また私をからかってるわけ、ね。」

 猫のくせに、命の恩人を毎回こうやって生産性の無い話しに付き合わせようとして来る。

 私だって、暇を弄んでいて良い学生では無い。しかも、こんな品の無い猫と。

 桜が舞い散る前のこの時、同級たちが故郷へ帰って呑気な時間を過ごしている今こそ、奴等との差をつけなければならない。

「私だって暇じゃ無いの。失礼します。」

 だいたい、こう言っておけば話は直ぐに終わる。

「学生さんは、どうして勉強ばかりするんだ?」

 しかし、今日はどうも具合が違うらしく、柏木は引き下がらなかった。

「どうしてって、それは私が学生だからよ。学生が勉強するのは当たり前でしょ。猫には分からないことかもしれないけど。」