「勉強の方はどうだ」だとか、「五丁目の風呂屋は良いぞ」だとか、毎回くだらないことを言っては、私の足を止める。

 今日も私に構ってほしいのか、下らない戯言をぶつぶつと言う。

「朝は、猫の体には毒だな……。」

 別に付き合ってやる義理は無いのだけれど、それでも根が優しい私は、いつもの様に、とりあえず隣の空樽に腰を降ろした。

「あなた朝って。もう今は夕刻よ。餌は食べたでしょ。」

 自分では、魚なんぞは好き好んで食べる代物ではないと豪語していたが、柏木の側にはいつも魚の骨が転がっていた。

 未曾有の儲けが出ているので、飼い主から身に余る褒美をもらっているのだろう。

 満腹の哺乳類は眠くなるもの。

「そうか、だから眠いのね………」