北へ半里ほど進むと、また違う橋が見えてきた。今度のは黒い橋で、遠くからでも、長いのが分かる。

「はあ、またなの。」

 そう呟きながら、橋の入り口にたどり着くと、私は背筋が凍りつきそうになった。

「学生さん、7錫、頂きます。」

「どうして、あなたが。」

 通行料に驚いたわけでは決してない。

 なんと、あの奇妙な赤橋にいた大男に瓜二つの門番が、私を待ち構えていたのである。

「学生さん、7錫ですよ。」

 声を聞いて、やはりあの門番と同じ男だと推察出来た。

 何かがおかしい。

 さすがに引き返そうとも思ったが、懐中時計に目をやると日没が迫っている。

 ここからだと大学町には戻るのは厳しい。

 だからと言って、この門番の近くで野宿するのだけは、躊躇われる。

 着物の襟をぐっと締め直した。
 
 まあ、ここで引き返しても、戻る時にまたあの赤橋で通行料を取られるかもしれない。

 仕方ないと心を決め、私は黒橋に踏み入ることにした。