もう暫く歩くと、川霧の晴れ間を縫うように、橋の終わり口がチラチラと見え始めてきた。

 やっとね、と安堵した。

 下着が染みるくらい汗に濡れて気苦しかった着物は、風が少し出てきたせいか、すっかり乾いていた。

「それにしても、長い。長すぎる。」

 つい独り言が出るほどの長さだったが、川霧が晴れると空は晩秋の柿を思わせるような真っ赤な夕焼けに染まっており、随分と時間が経っていたことに気が付いた。

 橋を渡り終えた処の辺りには人家一つなく、どうやらまだ目的の町では無いらしい。道はまだ北に向かって続いていた。

 どうやら、随分と遠くまで来ているようだ。町では感じたこともないほどの冷たい風が袖を揺らしている。

「もう少し行こうかな。」

 私は北へ歩みを続けた。