橋の半ばあたりで、川霧が深くなってきた。既に数分は歩いたと思うが、どうも端が見えてこない。
少し小走りで駆けてみると、みしみしと音を立てて今にも彼方此方に穴が空きそうだったので止めた。
「まさか、曰く付きの橋ではないでしょうね。」
恐る恐る後ろを振り返ると、確かに進んではいるようだった。既に門番の大男が豆粒ほどに見える処まで来ている。
しかし、これほどの大橋が、地図に名前すら載っていないのが腑に落ちない。
昨夜、柏木がホラを吹いていると思い、大学町の外縁地図を見たが、橋こそは書いてあったけれど、長さも通行料も記載が無かった。
七丁目の外れにある酒蔵近くの小橋にさえ、通行料が書き込まれていたのが余計に腑に落ちなかった。
ただ北側には人家もないので、せんなき事と潰した苦虫と一緒に飲み込んだけれど、やはり、怪しくなって来た。