赤橋には門番らしき男が立っており、これが柏木の言っていた処だろう。

「この橋を渡りたいのですが、おいくらですか。」

 そう問いかけると、その男はニヤっと笑いながら、ゆっくりと口を開いた。

「学生さん、5錫ほど、頂こうかな。」

 通行料に5錫とは、まあ確かに安くは無い。それだけあれば、餅屋でおこわを3杯食べてもお釣りがくる(まあ、食べられる自信は無いけれど)。

 しかし、文官への道に近づけるなら、致し方ないと思えた。

「学生さん、どうも。」

 遠くから見ると立派に見えたその大橋は、長さこそあるが、渡ってみると意外に幅はなく、馬車の荷台がやっと一台通れるほど。

 欄干は、心もとないほどに朽ちており、どうやらあの門番が誠実に管理運営をしているようではなさそうだった。