「唐風の煉瓦鳥居をくぐって少し歩けば、境内に一松傘が置いてあるから直ぐに分かる。」

 そんなものがあるなんて聞いたことが無かった。

「本当なの?」

「本当さ。まあ通行料は高いがな・・・」

 猫の言ったことを信じる私もどうかと思うが、結局私は、翌日には町外れ行きの乗合車に揺られていた。

 高い通行料を払うのは良いが、この有意義に過ごすべき春を、いつまでも猫と戯れ続けるのだけは気に食わない。

 それに任官試験に有利になるのであれば、猫にも縋ることは厭わない。高い費用も致し方ない。

 堀川に着くと、私は柏木の言った通り上流の方へ歩を進めた。

「少しばかり」と言っていたが、これが中々の距離で、気付けば着物の下は汗でじゅっくりになっていた。

 軽い書物なら優に読み終えられている時間である。

 正直、騙されているのではないかとも思えたが、私は一心不乱に歩き続け、一本の赤橋にたどり着いた。