「梨花、あきらめるのはまだ早い。

時間はまだ残っている。

オレは忍の遺書が見つけられるところにあると思う。

忍はオレたちに遺書を見つけて欲しいんだ。

忍は何かをオレたちに伝えたいんだ」


感情的になって泣いている私とは違って、雄一はこんなときでも冷静だった。


私が涙を拭い、少し落ち着いて考えてみると、雄一の言葉が正しいと思えてくる。


あきらめたら全てが終わりだ。


私は死に、世界が閉じる。


そんな未来を私は決して望まない。


私は生きて、雄一とずっと一緒にいたいのだ。


「雄一君、ありがとう。

私、あきらめちゃうところだった。

でも、可能性が残されているのにあきらめちゃいけないよね。

雄一君がいてくれて本当に良かった。

私は一人じゃないんだよね」


泣きながらそう言った私を雄一は優しく抱きしめてくれた。


雄一の腕の温もりが私の冷えた心を温めてくれてるみたいに、私の不安は和らぎ、ちょっとずつ落ち着いた気持ちになれていた。


私は忍の呪いが発動するそのときまで、決してあきらめてはいけないのだ。


私はそう思って忍の呪いに最後まで抗うことを心に誓うと、雄一の腕の中から抜け出し、雄一の顔を見つめていた。