「神子様は自分の運命を呪ったことはないのかい?」

運命?
それは、こんな奇妙な姿で生まれてしまったこと?

「もし生まれ変わるとしても、また同じ者に生まれたいと思うかい?」

それは・・・


運び込まれたのは洋館の一室。
ろうそくの炎が揺れる室内に大きな3人掛けの椅子があり、私はそこに寝かされていた。

たっぷりと眠り香をたかれたらしく、体がだるくて動けない。
口を開くのさえ怠くて、何を聞かれても返事はしなかった。
ただ、おそらく魔導士である女は心を読むことができるわけで、私が答えなくてもある程度の答えはわかっているようだ。

「神子様はいい仲間に恵まれたんだね」

え?

やっぱり心を読んでいるのね。
だから、

「悪く思わないでおくれ。神子様の念は人一倍強くて勝手に流れ込んでくるんだよ」

嘘。
私には力なんて、

「能力なんて人それぞれだからね。神子様の能力はまだ表に出る機会がないだけなのかもしれないし、もしかしたら気が付いてないのかもしれないよ」

そんなこと・・・

「とにかく、もう少しおやすみ。その間にいくつか呪縛をかけさせてもらうから」

呪縛?

「私には神子様の力が必要なんだ。だから少しだけ自由を奪わせてもらうよ」

・・・イヤ。
絶対に嫌。

「すまないね、運命だと思ってあきらめておくれ」

女は眠り香を追加で焚いて、いったん部屋から出て行った。
私は何とかして逃げ出そうとするけれど、指一本動かない。
このままじゃ、私は殺される。
この時になって初めて私は命の危険を感じた。