「やっと寝たか、強情なお嬢さんだ」
意地悪く笑う男。

意識を手放したはずの私になぜかその男の声が聞こえた。

それに・・・
理由はわからないけれど、床に倒れこんでしまった私を覗き込む男の姿が、見える。
見えるのは男だけではなく、横になったまま動かない自分自身の姿も。

どういうことだろうか?
まるで、私の魂が体から抜け出たよう。
天井から人ごとのように見下ろす私がいる。

一瞬、これは夢だと自己完結しようとして、

「きれいな顔だ」

武骨な手で私の顔をなでる男を見て、夢ではないと気づいた。
気持ち悪いほど鮮明に、男の手の感覚が伝わってきた。

「この世には不思議な生き物がいるものだなぁ」

頬をなで、髪に指を通し、頬ずりまでしようとする男。

ううぅー。
叫んでも声にならないとわかりながら、私は身もだえした。

逃げたい、けれど逃げられない。
魂はここにあるけれど、肉体は意識を失い男の腕の中にあるのだから。