そこは立派な住居だった。

深山の宿舎も何不自由ないところだけれど、こことは豪華さが違う。
店舗とは別に作られた住居と聞かされていたが、置かれている調度品も家具も全てがきらびやかで美しい。
決して華美なわけではないが、いかにもお金をかけた家。
これだけの財があるからこそ、白蓮を自分のものにしようなんて思うのかもしれない。


「どうぞ」

玄関には回らず、軒先から家に上がった。
こっそりと、人目には触れないように私を家に入れたいらしい。


「こちらでお待ちください。後ほど主人が参ります。もし御用がありますときは呼び鈴を鳴らしていただければ、すぐに参ります」
青年は一方的に説明をすると、返事も待たずに部屋を出て行った。

それまで一度も私を見ようとしなかった青年と、部屋を出る瞬間目が合った。
そこに映るのは驚愕と、恐怖と、哀れみ。

青年の目には私が化け物にでも映っているらしい。