「どうですか?」
戻ってきたお父さんに、声をかける尊。

「貰い物の葡萄酒を飲ませたから、よく眠っている」
「そうですか」

興奮したお母さんを奥の部屋に連れていき、宇龍が持っていた眠り香と葡萄酒で何とか眠らせた。
お父さんが「大丈夫だから」と背中をさすりながら、白蓮が手を握っていた。

さっきまであんなに気丈にふるまっていたお母さんが、尊の一言で気が狂ったようになってしまった。
きっと、我慢していたものが溢れてしまったんだろう。

「もう少し、言葉を選ぶべきでしたね」
みんなが思っていて言えなかったことを、宇龍が口にした。

「どんなに取り繕っても、現実は変わらない。無駄にやさしい言葉を選ぶのは現実逃避の詭弁だ」
宇龍をにらむ尊。

「それでも、不必要に悲しませる必要はない」

尊は言い返さなかった。
悔しそうに唇をかんだ。

「では、計画を聞きましょう」
宇龍は姿勢を正し、まっすぐに尊を見つめた。