こんな時だからこそ必死に涙をこらえてお赤飯をいただいた。
一緒に出されたお母さん手作りの煮物もとてもおいしかった。

料理を味わいながらふと八雲を見ると、同じように潤んだ瞳をしている。
私と八雲は小さな頃から深山で育った仲間。
恵まれた環境で食べるものに不自由した覚えは無いけれど、こんなふうに温かい食事は出てこなかった。
ささやかでもいいから暖かな食卓を、どれほど夢見たことだろう。

「さあ、お代わりをどうぞ」
差し出されたお母さんの手に、八雲が茶碗を差し出す。

「ありがとうございます」
きちんとお礼を言い頭を下げる八雲からは、憎しみの気持ちは感じ取れない。

ああこのまま、何も起こらずにすべてが終わればどれだけ幸せだろう。
しかし、

ガラッ。
勢い良く開けられた扉。

そこには尊と石見がいた。