その後、俺と石見は男のあとを付けた。

何軒かの取引先を回り、立ち食いそばで昼食をとり、午後からは町の孤児院へ。
そこには親と離れて暮らす子供たちがいる。
男は大きな包みにお菓子をいっぱいに詰め込んで、孤児院の子供たちに配っていた。

やはり、善人にしか見えない。
これだけついて回っても素顔を全くのぞかせない。

「あいつが死ねば、白蓮は助かるんだよな?」
「え?」
物騒な言葉が聞こえ、石見を振り返った。

その真剣なまなざしはまっすぐ男に向けられている。

「やめておけ。あんな奴のためにお前が罪を背負っても白蓮は喜ばないぞ」

白蓮のことだから、自分の責任だと感じて一生苦しむことだろう。
それに、今回は免れてもいつまた同じような人間が現れるかわからない。

「何か手はあるのか?」

初めて、石見に意見を求められた。
見ず知らずの俺にすがりたいと思うほど、石見も追い詰められているってことだ。

「そうだな、まずは」

ぼんやりと考えていた策を石見に話そうとした時、

「ちょっと、あなた」

キーンと響く声がして、俺は右腕をつかまれた。