「稲早、急いで」
須佐が呼ぶ声。

私は早足で本殿へ駆け込んだ。

ハアハア。
息を整え、身なりを整え、朝の拝礼へ。

午前6時30分
1人ずつがお祓いを受け、1日が始まる。

「稲早」
呼ぶのは、上級神官の朝倉(あさくら)。

怖い顔で私を見ている。

ヤバイ。

「なぜ、遅れたんですか?」
「・・・」
この状況で、「寝坊しました」なんて言えるわけもなく、
私は黙り込んだ。

「今日は外出を禁じます。1日宿舎で反省しなさい」
「えー?」
思わず出た言葉に、さらに強く睨まれた。

「明日も、謹慎したいですか?」
「いいえ。すみません」
頭を下げた。

朝倉神官は私たち3人に付いた教育係。
歳は・・・25。背が高く、見た目はいいのだが、とにかく厳しい。
今も、心配して駆け寄ろうとする八雲を「朝食の時間です」と止めている。

『ごめん、いくね』と視線を投げる須佐と八雲。

あーあ。
これで今日はおかゆの日だ。

こんな風に、宿舎で謹慎になった日にはおかゆしか運ばれてこない。
おかずも、お変わりもなし。
育ち盛りの私たちには何よりも辛い。