いくら夜中とはいえ、堂々と参道を通っていくわけにはいかず山道を選んだ。

お互い思うところはあるが、稲早を見つけたいという目的は一緒。
俺より10歳ほど年上の宇瑠だって今は切羽詰まっているはず。
協力できるところは協力しなくては。

「足下が悪いので気をつけてください」
ぬかるんだ山道を下りながら、宇龍が俺を気遣う。
「ありがとう。でも、気遣いは無用だ。今は、稲早のことだけを考えよう」

少しでも早く、町にたどり着いて稲早を探したい。
その為なら、多少転んでも平気だ。

「分かりました。では、急ぎましょう」
宇龍も納得したように足を速めた。


こうなったのは自業自得。
俺にも分かっている。
でも、稲早のことは別だ。
たとえ軽率な行動が招いた結果だとしても、稲早に失踪するほどの罪はない。

どうか、無事でいてくれ。
祈るような気持ちで、真っ暗な山道を駆け下りた。