「で、借金のかたに差し出される白蓮の身代わりが稲早?」
尊の鋭い突っ込み。

父さん、母さん、兄さんが下を向く。

「確かに私と白蓮は似ているけれど、見間違えるほどではないと思う」

白蓮と私では違いすぎる。
髪の色も、目の色も違う。

「奴らは白蓮を見たことがない。黙っていれば分からないさ」
悔しそうに兄さんが言う。

はあ?
じゃあ、私はどうなるの?

でも、待って。
要はお金があれば、白蓮は連れて行かれないのよね。
それなら簡単なことじゃない。

「借金はいくらですか?」
「え?100万銭程ですが・・・」
お母さんが答えた。

100万銭。
米が30キロ5000銭だから、かなりの大金ではある。
節約すれば半年くらい暮らせるお金。
でも、
「私が用意します」
そう言った私をみんなが見る。

「だってそうすれば、白蓮はこのまま暮らせるんでしょう?」
父さんも母さんも不思議そうに見ている。
そして、尊が睨んでいる。

「ちょっと来い」
突然立ち上がった尊が、私の腕をつかみ部屋の隅へ連れて行く。
「痛いっ」
抵抗してみるが、尊の力は強かった。
「いいから来いっ」
かなり怒っている様子。