ええっ。
私も尊も息を飲んだ。
あまりにも現実離れしていて、この世の物とは思えない。

「嘘だろう・・・」
尊の声がもれた。

私は、息をするのを忘れそうになった。

私達の前に現れたのは、真っ白な少女。

身長はほぼ私と同じ。
大人と呼ぶには小さくて、成長過程の華奢な姿。
そして・・・真っ白な肌。
真っ直ぐで透き通った髪の毛は肩を超える長さにそろえられている。
瞳は赤。
そして、どことなく顔立ちが私に似ている。
尊もポカンと口を開けながら、私と彼女を見比べている。

世の中には、人の知恵では計り知れないことがまだまだあるという。
目の前の彼女も、きっとその1人。
色彩を持たずに生まれてきた少女。

部屋から出てきた少女は、壁伝いに歩きながら女性に近づく。
どうやら、あまりよく目が見えていないよう。
私も手を差し出しそうになった。
その時、奥の部屋からもう1人、少年も出てきた。

転ばないように、そっと手を当てながら彼女を助ける少年。

「お母さん」
少女が女性に抱きついた。

「白蓮(はくれん)、無理したらダメだ。体にさわるよ」
少年が少女を気遣う。
「志学(しがく)、ありがとう。でも、大丈夫だから」
少女も少年の手を取る。

どうやら、真っ白な少女は白蓮と言うらしい。
この家の娘のよう。
少年は志学。
2人は恋人だろうか?

白蓮は女性のとなりに腰を下ろした。