床に転がる志学の抜け殻、おびえたように震える白蓮と八雲、力尽き膝をついた宇龍。3人を守るように須佐と石見が前に立つ。

今ここで戦えるのは尊と私だけ、もうやるしかない。

「神子様も若様も、そのまま逃げればいいものを」
あきれたような女の言葉。

そんなことできるものか。
ここにいるのは私の仲間なんだから。

「じゃあ、行くよ」
女が言うのと同時に、

ウッ。
全身が熱くなり、息ができなくなった。

燃える、体が燃える。

「やめろ」
尊が何やら呪文を唱え女に向かって腕を振り下ろす。

ウゥ。
今度は女が声を上げた。

尊の攻撃が女にダメージを与えたらしい。

――いいか稲早、絶対に女から目をそらすな。そうすれば術はかけられない。

――うん。

――そして、強く念じろ。自分を信じて思いをぶつけるんだ。いいな?

――うん。

「若様、妙な入れ知恵はやめてもらいましょう。神子様を目覚めさせれば、厄介なことになりますからね」

女が手を広げ、空間に大きな火の玉が出来上がる。
その火の玉がまっすぐ私に向かって、

――イヤ、止めて。
私は強く念じた。

それでも向かってくる炎。

お願い、止まれっ。

パチン。
私の体にあたる寸前のところで、なくなった。

本当に、消えた。
私が消したんだ。

「今度はこっちの番だな」
尊が呪文を唱えると、女が頭を抱えて苦しみだした。