――いま目を閉じれば、相手に付け入る隙を与える。辛くても目をそらすな。
――うん。

自分の意志でここに来た以上逃げるわけにはいかない。

「おや、若様と神子様まで」
意外そうに、でも嬉しそうに女は私たちを見た。

「宇龍大丈夫か?」
尊は女を無視して宇龍に駆け寄る。

「ああ。でも、そろそろ限界だ」
片膝をつき今にも崩れ落ちそうな宇龍。

見ると宇龍と八雲と白蓮、三人を囲むように結界が張られている。

「ありがとう。もう大丈夫だ。あとは変わるから」
そう言うと、尊が額に人差し指を当てた。

その瞬間、宇龍がかけたものよりも強くて大きな結界が八雲と白蓮を包み込んだ。

「志学」
石見の叫び声。

「何で、」

部屋の中央で横たわる志学の体。
その血まみれの姿は、遠くから見ただけで亡くなっているのはわかる。

「お前が殺したのか?」
尊が女に問いかける。

「ああ。もともと自分が裏切っておいて、今更歯向かうからだよ」

え?

「こいつはね、代わりに神子様を差し出すから白蓮は逃がしてくれって男と取引をしていたんだ」

そうか、だから男は私が白蓮でないと知っていたんだ。