『───可愛いのに、それに甘えないのってかっこいいね』


中学時代のある日突然。

本当に突然、図書室が休館日で仕方なく教室で本を読んでいたとき。

上から降ってきたその言葉に驚いた。

それは今まで言われてきた言葉とは真逆のもので……諦めていたはずのものをもう一度求めたくなってしまった。

家族でも私を理解してくれなかった。

私を理解してくれる人はもういないと諦めていた。


それが、こんな急に、関わりのなかったような人から言われて、そして簡単に希望を抱いてしまって。
それほど渇望していたんだという事実に、私はその日気付かされた。


『可愛い子って甘やかされるでしょう?だからそれに満足して、それ以上を目指す努力をしない。可愛ければ青春に必要なものは手に入るし、人生もそれなりに楽しめる』

『……』


ゆっくりと語り出す目の前の子は中の上くらいのルックス。

ただ、だからと言って可愛い子を妬んで厳しいことを言っているような、そんな嫌な感じはしなかった。

あくまでも静かに説く様を私は口を挟むことなく見つめ、続きの言葉を待った。


『でも、結城さんは将来をきちんと見据えて、努力して上を目指してる。周りの甘い言葉に惑わされずに自分の意思を持って頑張ってるのが、すごくかっこいいと思うんだ』