綺麗で整った顔にきりっとした目元。
濃い緑色の瞳は宝石のようにキラキラとしている。
装飾の施された西洋の貴族のような服を身に纏い、腰元には剣を携えていた。

ていうか、剣?
え?
マジで何?
コスプレ?
今ここで?!

状況が飲み込めずポカンとする私を、綺麗な顔の彼は軽々と持ち上げた。それはいわゆるお姫様抱っこというやつだ。

「…………かっこいい」

こんな状況なのにそんな能天気なことを口走っていた私は、きっと相当動揺していたに違いない。

そうか、これは夢だ。
さっき夢小説の妄想をしていたから、その続きなんだろう。脚立から足を踏み外してよろけたときに、きっと頭でも打ち付けてしまったんだ。うん、そうだ、そうに違いない。

こんなイケメンにお姫様抱っこされるなんて、ラッキーじゃない?
私の妄想力、半端ないよね!
あ~、夢なら覚めないで。
だってこのあと胸キュンな展開が待っているんでしょう?

……なーんてね。
そんな上手い話がありますか。
いや、あってほしいけど。

私はゆっくり目を閉じた。
これで夢から覚めるかと思ったからだ。

けれど、待てど暮らせど、この夢が覚める気配は一向になかった。