「ううん、ありがとう」

お礼を言うと、ジャンクは柔らかく微笑む。

ジャンクは本当に物腰柔らかで優しい。
きっとシャルロットはそんな優しさに惹かれたんだろうな。だから物語では二人は恋人になったんだ。

でもごめんね、私はシャルロットじゃなくて菜子なの。
菜子の推しはアズールなの!

と意気込んでみたものの、アズールはずっと冷たいままだ。図書館に行くのを反対されて以来、私たちの関係はギクシャクしたまま気まずい空気が流れている。最近ではお伴は侍女ばかりで、アズールに頼ることもなくなっている。

ああ、現状打破するにはどうしたらいいんだろう。
どうしたらアズールに振り向いてもらえるんだろう。

窓辺にもたれ掛かって外を見る。
澄んだ青空とは対照的に、自分の心は曇っていくように感じられた。

「アズール様はシャルロットを大切にしてくれてる?」

「王女としては護られてるよ。でも悲しいことに女性としては見てくれてないかな。」

自虐的に肩をすくめながら言うと、ジャンクの顔が険しくなった。そして私をじっと見つめる。突然腰をぐっと引かれ、私は前のめりになった。

「やっぱり僕がシャルロットを幸せにしたい」

受け止めたジャンクは私の耳元でそう囁くと、そのままぎゅっと抱きしめた。思ったよりも逞しい胸にジャンクが男性であるということを再認識する。