毎日こっそり城を抜け出すのはやはり気がひけるしバレそうなので、たまには侍女を連れ立って読書のみする日を設けてカモフラージュしながら、私は着実にジャンクと親交を深めていた。

というより、図書館の運営に携わることができて嬉しいのだ。生き甲斐というか遣り甲斐というか、自分の存在意義を見出だせているようで、充実した毎日を送れている。

菜子である自分はだんだんとシャルロットでいることにも慣れてきた。ドレスの裾の扱いも上手くなったと思う。

もう何度目かの図書館。
今日はお忍びの日だ。
ジャンクはアズールがいないのを確認すると、ふいに私の髪を掬って毛先にキスを落とした。

「ねえシャルロット。記憶がなくなってもやっぱりシャルロットはシャルロットだね。僕は今でも変わらず君が好きだよ」

決して強要しない、ただ甘い言葉は私をまろやかに包み込んだ。思った以上に自分の体温が上がっていくのがわかって焦る。

「ジャンク、でも私は……」

言葉に詰まると、ジャンクは静かに首を振る。

「わかってるよ、アズール様のことが好きなんだよね。それはそれとして、僕の気持ちもちゃんと伝えたかっただけ。困らせてごめんね」

そう言って、優しく私の髪を撫でた。
その手付きすらも甘くて優しく、胸がきゅんとなった。