それにしても、私はあの図書館の煩雑さも気になっていた。

せっかくあんなに立派な図書館なのに、大分類でしか分けられていないなんてもったいない。もっと細かく分類分けすれば、もっと使いやすい良い施設になると思う。せっかく庶民にも広く開放されているのだから改善しない手はない。

私は考える。
菜子の司書としての知識をここで生かすことはできないだろうか。この世界に来て私にはやることがない。記憶喪失として時間をもて余しているだけなんてもったいない。せっかくだからこの世界でも自分の生き方を見出したいと思うのだが……。

というわけで、翌日も図書館へ赴こうとすると、またしてもアズールに反対された。

「何をしに行くんだ」

「図書館をもっと隅々まで見てみたいの」

「……またジャンクに会うつもりか?」

「まあ、図書館に行ったらジャンクに会っちゃうかもしれないけど、私はただ純粋に図書館へ行きたいだけで……」

「俺は反対だ」

腕組みをして冷たい声で言う。
さすがに少しムッとした。

「私は図書館の運営の仕方を変えたいの。今は大分類でしか分けられていないでしょう?もっと細部まで分けた方がいいと思うよ」

「お前は王女だ。そんなことをする必要はないだろう?」

「でも図書館は国のものでしょう?変えたらきっと皆が使いやすくなると思うの」

私の訴えに、アズールは興味無さげにふんと一瞥した。

「いくら記憶がないとはいえ、もう少し王女としての自覚を持っていただきたい」

「図書館は国のものだし、結構王女っぽいこと言ってると思うんだけど?」