たくさんの本に目移りしながら奥へと進んでいく。

どうやらここは本のジャンルごとに分けて並べられているが、それ以上の分類には分けられていないようだった。そのため、少し煩雑に感じられた。

(分類番号付けて整理整頓したい……)

職業病だろうか、そんな風に思ってしまう。

次の角を曲がるとき、ちょうど向こう側から歩いてきた人とぶつかりそうになった。

「あ、すみません」

「シャルロット?」

頭を下げる私にかけられる、名前を呼ぶ声。
顔をあげて見ても当然私はそれが誰だかわからない。

「…………どちら様でしょうか?」

「え……?」

そこに立っていたのはベビーフェイスなイケメンで、柔らかな雰囲気を纏っている。そして私を不思議そうな顔で見つめた。

「えっと、ごめんなさい。私頭を打って記憶喪失になってしまったんです。だから何も覚えていなくて」

「記憶喪失?!シャルロット、僕のこと覚えていないの?」

勢いのまま、彼は私の両手を優しく包んだ。
大きくてあたたかい手は、シャルロットの華奢な手を愛しそうに撫でる。

これはもしや……。