私は樹希の頭を右手で撫でながら左手で手を包み胸元に顔を沈めていた


「ご、ごめん!!」



な、なんか今日の私、変!?


「いやー、いいよ?うん、全然いいから」


樹希はまた変な誤魔化しをする


「ふぅーふぅーなんか胸が痛い」


何この胸の痛み


「俺もだよ」


「なんで?」


「え?なんでだろうな?」


「教えてよ!ごめんね、嫌だった?」


「そ、そんなことない!むしろ、うん、そんなことない」


今日の私はおかしいみたい


紅美と仲良くなれた時とは違う


塚本先輩と付き合った時とは明らかに違う


ずっと触れていたいと思う人は初めてかもしれない




「そろそろほんとに帰るね?
遅くなって申し訳ない」


「ううん、全然」


「また今度美優子さんの好きな曲聞かせてよ
あの楽譜にある曲さ」


「あ、いいよ」


私の好きな曲かー


今度私の好きなピアニストがこの楽譜にある曲のコンサートがあるんだよなー


ほんとに聞きたいなら本場を聞いてもらいたい



「今度この楽譜に載ってる曲を弾いてくれるピアニストが居てさ
私その人のコンサート聞きに行くんだけど
樹希も来る?」


少しでもいいと思ってくれたら


私と同じものを好きになってくれたら



なんてね


「マジで?行きたい!」


嬉しそうな樹希の表情はやっぱかわいい


うん、その顔から暴力は似合わないよ


「じゃあ今度の日曜日ね」


「やったー!約束!」


私は樹希と一緒にコンサートに行くことにした