「撫子によく似合うよ。きみは顔立ちがはっきりしていて、顎や鎖骨のラインがほっそりしているから、ボリューミーなドレスが映えるね」
「本当? 恭の好み?」
「何を着ても美しいと思うけど、このドレスについて言うなら、すごく俺好みだよ」

お熱いことだ。恭は、俺こそ女性の扱いが上手いというような言い方をするが、実際、恭だって学生時代は女性が放っておかない男だった。撫子が年頃になり、恭を婚約者に望むまでは、人並以上にモテていたし、恋人だっていた。
今でこそ恋愛で結びついた恭と撫子だが、当時の恭はどうして婚約の話を受けたのだろう。……やはり表立って言わないだけで、文治の後継者の座を考えているということもあり得るのではなかろうか。

「あら、初子さんが来ない」

撫子が元来たドアの方を見やる。俺と恭も視線を送ると、ドアの影に隠れるように立っている初子の姿を見つけた。

「初子さん、ほら、兄さんに見せてあげて」

おずおずと出てきた初子もまた、ウエディングドレスを着ている。おそらく撫子に着るよう勧められ、断れなかったのだろう。きまり悪そうな顔をしている。
初子のドレスは、撫子のお姫様風ドレスとは対象的にすとんとしたデザインで、五分丈の袖がある。
襟ぐりは大きく開いていて、つい俺は初子の鎖骨から胸元を凝視してしまった。普段シャツの下でまったく見えない素肌だ。