「お義兄さんって、噂と違ってすごく紳士だし、びっくりするくらいイケメンだし。しかも、挨拶しただけでわかるけど、お姉ちゃんのこと大好きじゃない。どうなってるの? 最初、契約で一時的な結婚って話じゃなかったの?」
「私もそのつもりだったんだけど……」

言いながら照れてしまう。

「連さんのこと、好きになってしまったから……」
「はあ、恋愛する気ゼロだったお姉ちゃんの言葉とは思えない。恋って女を変えるのね」

私よりよほど恋愛経験の豊富な美雪は、姉の変貌が信じられない様子だ。私自身も信じられないとは思っている。

「表情もどうなってるのよ。幸せオーラでまくり。緩みっぱなし」
「だって、嬉しいんだもの。大事な人が、念願の立場を手に入れて、今日はお祝い。こんなに嬉しいことはないわ」

私はにっこり笑って、妹を見つめた。

「いろんな意味で勉強になったから、東京に来てよかった」
「確かに、そうねえ。あ、お姉ちゃん」

思いだしたように美雪が目を見開き、鞄から私に封書を取り出してきた。

「あの人とお金の件、全部済んだから」

あの人とは母のことだ。美雪が引き受けてくれ、横領金額を父に返す手続きが終わったのだ。

「これは?」