翌日、終業後早々に俺と初子はホテルのラウンジにやってきた。真夏の夕暮れはまだ明るく、ラウンジに差し込む日差しは柔らかなオレンジ色。白いクロスのかかった丸いテーブルも椅子も、すべて温かな夕焼けに染まっている。
昨日と同じ奥まった席に、柴又好江はいた。姿を見つけた瞬間、隣の初子が息を呑むのがわかる。
「初子」
彼女が立ち上がり、俺にお辞儀をしてから初子の名を呼んだ。
「本当に立派になって」
初子は静かに黙っていた。駆け寄りたそうにしている柴又好江を、失礼にならない程度に手で制し、俺は初子を席に着かせた。初子の顔色はずっと悪い。
「ずっとあなたに謝りたいと思っていた」
彼女はそう言って話しだした。家を出てどうしていたか。どれほど申し訳ないと思っていたか。
初子たちのことを考えないときはなかったという言葉に、初子が唇を噛みしめるのが見えた。
それは感極まった表情ではない。苦痛と怒りを押し殺したものだ。
やはり、再会は失敗だっただろうか。初子の心を掻き乱すだけで終わってしまうのだろうか。
「見てほしいの。あなたと半分血の繋がった妹になるのよ。“みう”と言うの」
柴又好江がスマホを差し出す。そこに映っているのは小学生くらいの女児だ。
初子によく似ている。おそらく並んだら、誰もが姉妹だと言うだろう。
初子の表情が初めて揺れた。
幼い、自分と瓜二つの妹の姿は、さすがに平静ではいられないようだ。しかし、言葉は出てこない。
昨日と同じ奥まった席に、柴又好江はいた。姿を見つけた瞬間、隣の初子が息を呑むのがわかる。
「初子」
彼女が立ち上がり、俺にお辞儀をしてから初子の名を呼んだ。
「本当に立派になって」
初子は静かに黙っていた。駆け寄りたそうにしている柴又好江を、失礼にならない程度に手で制し、俺は初子を席に着かせた。初子の顔色はずっと悪い。
「ずっとあなたに謝りたいと思っていた」
彼女はそう言って話しだした。家を出てどうしていたか。どれほど申し訳ないと思っていたか。
初子たちのことを考えないときはなかったという言葉に、初子が唇を噛みしめるのが見えた。
それは感極まった表情ではない。苦痛と怒りを押し殺したものだ。
やはり、再会は失敗だっただろうか。初子の心を掻き乱すだけで終わってしまうのだろうか。
「見てほしいの。あなたと半分血の繋がった妹になるのよ。“みう”と言うの」
柴又好江がスマホを差し出す。そこに映っているのは小学生くらいの女児だ。
初子によく似ている。おそらく並んだら、誰もが姉妹だと言うだろう。
初子の表情が初めて揺れた。
幼い、自分と瓜二つの妹の姿は、さすがに平静ではいられないようだ。しかし、言葉は出てこない。