「わかっています。自分勝手な考えだということも」
柴又好江は顔を歪めた。
「娘を育てながら、初子と美雪を思いだしました。何度も会いに行こうと思って、自分の罪を思うといけませんでした。責められるのが怖かった。今の夫に正直に話す勇気が出たのも、本当に最近のことなんです」
彼女の苦しげに寄せられた眉。目元は本当に初子に似ている。
初子は何度、自分の中に憎い母の影を見ただろう。それが初子の心を縛ってきた。幸せになってはいけない、と。
「夫が、初子と美雪の父親にお金の弁済を申し出たいと言ってくれました。少し土地を持っている人なので、それを売る算段もつけてくれました。これで、謝りにいけるだろう、と」
なるほど、お金の話というのはそのことか。
無心ではなく、弁済。
美雪さんから初子にどう伝わっているかわからない。
「ご主人に。聞いていると、本当に人に頼ってばかりですよ。あなたは」
「おっしゃるとおりです。手ぶらで謝りに行き、責められる勇気すらない。今頃、顔を見せて、初子をどれほど傷つけるかもわかっているんです。でも……」
彼女は言葉を切った。初子によく似た瞳からぽろりと涙が零れ落ちる。
「大きくなった初子に会いたかったんです。言葉を交わしたかった」
柴又好江は顔を歪めた。
「娘を育てながら、初子と美雪を思いだしました。何度も会いに行こうと思って、自分の罪を思うといけませんでした。責められるのが怖かった。今の夫に正直に話す勇気が出たのも、本当に最近のことなんです」
彼女の苦しげに寄せられた眉。目元は本当に初子に似ている。
初子は何度、自分の中に憎い母の影を見ただろう。それが初子の心を縛ってきた。幸せになってはいけない、と。
「夫が、初子と美雪の父親にお金の弁済を申し出たいと言ってくれました。少し土地を持っている人なので、それを売る算段もつけてくれました。これで、謝りにいけるだろう、と」
なるほど、お金の話というのはそのことか。
無心ではなく、弁済。
美雪さんから初子にどう伝わっているかわからない。
「ご主人に。聞いていると、本当に人に頼ってばかりですよ。あなたは」
「おっしゃるとおりです。手ぶらで謝りに行き、責められる勇気すらない。今頃、顔を見せて、初子をどれほど傷つけるかもわかっているんです。でも……」
彼女は言葉を切った。初子によく似た瞳からぽろりと涙が零れ落ちる。
「大きくなった初子に会いたかったんです。言葉を交わしたかった」