初子の妹からの連絡があって、数日。初子はどこか浮かない顔をしている。
俺も新妻とべったり幸せな新婚生活とはいかず、初子を見守るスタンスでいる。夜も欲望をぐっと抑え込んで、初子を抱き締める程度にとどめ、一緒に眠っている。

母親と会うのかどうするかは初子が決めるべきであり、俺が助言することではない。
そもそも、仙台の妹のところに連絡と接触があったという状況。初子から母親に連絡はできなのだろうか。それとも連絡先を妹経由でもらっているのだろうか。
そのあたりも、俺は触れないようにしている。

腫れものを扱うようにはしたくないが、初子の沈鬱な表情を見ると、刺激をせずに初子の中で昇華できるまで待ってやりたいのだ。

「梢さん、お客様がお見えですよ。アポイントがありましたか?」

その日の午前中、突如総務から来客を告げられ、初子は顔色をなくした。当然アポイントはなく、初子を尋ねてくる外部の人間はいないはずだ。

「すみませんが、心当たりがないです」

答えた初子の声は震えていた。総務の行員が戸惑った顔をする。俺は代わりに応えた。

「俺が出るよ」
「連さん」

初子が厳しい声をあげる。総務の行員を持ち場に返して、俺は立ち上がった。