「じゃあ、どういう理由で彩乃さんは元気なく過ごしているのですか。ご両親はそれはそれは心配されてます。貴女は僕を執事に雇ったんでしょう? その原因の根絶を、僕に頼むのが筋じゃないですか?」

「みさ……」

「おーっと、そこまで」

話に割って入って来たのは、秀星だった。今日も授業が終わり、彩乃の不調をクラスメイトから聞いて、中庭で彼女に問い質していたところを秀星が見つけたのだった。

「悩める乙女を少年漫画のように説得しようとするなよ、岬」

「なんだよ、秀星。俺の聞き方が悪いってのか?」

「イエス、イエ~ス!」

軽い奴だな。でも彩乃の悩みはそんな軽いもんじゃない筈だ。なんて言ったって入学式で岬の上を行った彩乃が学年首位を落とすくらいなんだから。

しかし秀星はまるでパーティーでエスコートするかのように彩乃の手を取って、彩乃の視界から岬を遠ざけた。

「あとは僕が聞きますよ、彩乃さん」

そう言って、秀星は彩乃を連れ去った。……何を聞き出すのか、気になった……。