彼女と話したかったけど話せなかったから。



けど、彼女と目が合うことは一度だってなかった。



「莉桜…」



久しぶりに俺と目を合わせてくれる莉桜が、たまらなく愛しかった。



俺は彼女から目線を離せなかった。



「俺、やっと分かったよ。莉桜がいちばん好きなんだって。どんな女と付き合っても、俺の心は満たされなかった。それに、このマフラー」



俺は莉桜のマフラーにそっと触れた。自然と莉桜と距離が近くなって、自分の心臓がうるさくなり始めたのが分かった。



「俺があげたやつだろ?いつあげたんだろう…。そう思うほど前に渡したものを、莉桜はずっと大事につけてくれている。その時、莉桜じゃなきゃダメだ。莉桜が好きだって、今更ながら気づいた。本当にごめん。もしまだ俺のことを好きでいてくれているのなら、俺と付き合ってくれませんか」



言えた。



何年ぶりだろう。自分の気持ちに、素直になれたのは。



「…はい…っ」



驚きの返事だった。



もう好きな奴でもできたのかと思ったのに。



莉桜を見ると、彼女の目から涙が溢れていた。



「かわいいよ、莉桜」



俺は彼女の涙をそっと親指で拭った。