「よし、じゃあ美化委員は桜庭に決定!じゃあ次は応援委員…、」

「はい。」


 突然、私の2つ後ろの席に座っていた、隼人が手を挙げた。

 越智先生が、目を丸くする。


岡田(おかだ)?応援委員入りたいの?」

「いや…美化委員、入りたいです。」


 今度は、私が目を丸くした。


「いいけど…岡田ってそういうキャラだったっけ?」

「別に。ただ、美化委員を音葉だけに任せてたら、学校がゴミだらけになりそうじゃないですか。」


 教室中から爆笑が巻き起こる。

 私は赤くなった顔を隠すように、目を伏せた。


「確かにね。じゃあ、美化委員は当面、桜庭と岡田の2人ってことで。」


 越智先生まで笑っていた。



 そう、これが始まり。

 美化委員になった私と隼人は、放課後や休み時間を使って、毎日学校のどこかしらを清掃している。

 昨日は校庭。

 今日は、美術室として使われている教室。

 そして私は掃除の度に、隼人の服を汚してしまっているのだった。


「やっぱり向かないよなあ、美化委員…。」


 私はため息をつきながら、美術室に戻った。

 隼人に、私が先ほどまで着ていたジャージを渡す。


「水、かけちゃってごめんね。これ、私のジャージ…。」

「ん。」


 隼人はジャージを受け取ると、美術室を出ていこうとする。

 ドアに手をかける直前、彼は私の方を振り返った。


「今日、もう遅いし、一緒に帰るか?」


 ふと時計を見ると、短針はすでに6を通過していた。