ああ、今日も音葉は可愛かった…。
いつか絶対、俺のモノにしたい。
部活を終えてから、俺は浮かれながら帰宅した。
自分の部屋がある2階に上がると、廊下に兄貴が立っていた。
「おかえり、隼人。」
そう言うと、優しく微笑む。
兄貴の笑顔は、男の俺がドキッとしてしまうほど、美しい。
「ああ、ただいま。」
俺は目を合わさないようにして返事をすると、自分の部屋のドアに手をかけた。
「隼人、お前さ、幼なじみがいただろ。幼稚園からの。」
俺は思わず、ドアから手を離した。
「桜庭音葉さん…だっけ?」
「そうだけど、俺、音葉の名前なんて兄貴に教えたっけ?」
「隼人、音ちゃんのこと、好きなの?」
俺の質問など全く無視して、兄貴は続ける。
…音ちゃん?
音ちゃんとは、何のことだ。
「好きなの?」
好きだ。
大好きだ。
でも、いざそう口にしようとすると、やはり少し恥ずかしい。
「別に…ただの友達?」
嘘だった。
音葉と俺は、友達にさえなれていない。
「実は今日さ、音ちゃんと高校で偶然会ったんだけど。」
自然と、体が強張る。
「隼人にあんな美人の幼なじみがいたなんて、知らなかったなあ。」
俺の首筋を、冷や汗が伝う。
兄貴がこれから言おうとしていることは、なんとなく想像ができた。
「僕さ、あの子、気に入っちゃった。」
俺は目を見開いた。