『ずっとずっと好きなヤツ』





 桜庭音葉は、絶世の美女だ。

 少なくとも俺はそう思っている。


 とにかくデカい目に、小さい鼻、プルっとした唇。

 この高校に、彼女より可愛いヤツがいるとは、俺には到底思えない。

 しかし、音葉本人は、自分が美女であることを自覚していないようだった。



 俺は岡田隼人。

 高校1年生、サッカー部所属。

 俺には、幼稚園の時から、ずっとずっと好きなヤツがいる。

 それが、さっきも言った桜庭音葉だ。


 最初は、確か俺が4歳の時。

 初めて音葉に会った日、俺は一瞬にして恋に落ちた。

 彼女はチビの頃からずっと可愛くて、いいヤツだった。

 俺は、そんな音葉のことが、愛おしくて愛おしくてしょうがなかった。


 ただ、1つ問題があった。

 それは、俺が、どうしようもなく恋愛ベタだったということだ。


 女性にどう接していいのか分からない。

 もちろん、音葉も例外ではなかった。


 音葉に、何か変なことを言って嫌われたらどうしよう。


 そう考えると、下手に関わることができなかった。

 無意識に、音葉のことを避けるようになっていた。


 幼なじみだというのに、俺と音葉の距離はどんどん開いていった。


 そうこうするうち、俺たちは関係の進展が一切ないまま、高校生になってしまった。

 つまりだ。

 俺は、約12年もの間、音葉に片思いし続けているのだった。