私は、目を閉じ、
深呼吸を3回した。
(落ち着け。落ち着け、おばさん。)
そして、目を開けて、カレを見た。
カレは私を見ていた。
私は、思わず、
ギョッとした顔でカレを見た。
(ヤバい…)
私は、動揺がばれぬよう
直ぐに、メニューをとり、
それを盾に、前方を隠しながら
《と、とりあえず、お腹空かない?
なにか食べようか~》
と、メニューから
恐る恐る顔を覗かせながら、
カレにたずねた。
カレは、コクりと頷き、
体を前のめりにして、こちらの
メニューをのぞきこんできた。
(…んなっ!?近…!?え!?ちょっ!?)
ここにきて、若い男の子と
ファミレスに来ている状況を
やっと把握し、怯え始めていた。
私は、持っているメニューを
自分の顔面に押し付け、右側にある
メニューを慌てふためきながら、
手探りで取り、カレがいるであろう
前方に
《め、めめめめ、メニュー…こ、これ。》
語彙力0で、カレに向けて差し出した。
“あ、ごめんなさい。
ありがとうございます…”
か細い声が聞こえたので
メニューは、無事
カレの手元に渡ったのだと感じ取った。
そして、少ししてから
メニューのページがめくれる程度
まで顔から離し、そのままの
メニューを選び、また、カレの様子を
伺うかのように、そーっと覗きこんだ。
カレは、まだ、なにかとなにかで
迷っているようで、メニューを何回もめくり
いったりきたり、パタパタしていた。
なんだか、幼い少年のように見えて
かわいくて、少し笑えた。