「――――兎希、貴方も十八歳になったら地上へ降りるのよ」
「うん、お母さん、分かってる。人間の若い男を食べるんでしょ?」
「そうよ、それは私たち『兎月鬼』が存続する為の大切な使命なの」
「……でも、あたし自信ないなあ……もし食べられなかったら、あたし死んじゃうんでしょ?」
「そうね……」
「人間の若い男は食料だけど……『情』が沸いちゃうかもしれないし……」
「……じゃあ兎希、昔話を一つ教えてあげる」
「昔話?」
「――――昔々、人間の若い男に恋をしてしまった兎月鬼がおりました……」
「ええ?! 何それ! そんな事ってあるの?! もし若い男に恋なんてしちゃったら、絶対食べられないじゃん!」
「その兎月鬼はどうしたんだろうねえ?」
母親はまたゆっくりと昔語りを始めた。
若い男に恋をした兎月鬼の行方は、彼女たち一族だけの秘密……
◇
【おわり】