「……鶏肉でも牛肉でも俺、買ってくるから……だから、兎月……そばにいてくれ……」
私の肩に顔をうずめ、泣いているような声で陸は言う。でも……
「ごめん、陸……無理だよ…………」
私を抱きしめる力が強くなる。
「兎月を……助けたいんだ……一緒にいたいんだ……!」
「ダメなんだよ、出来ないんだってば……!」
私だって……! 陸とずっと一緒にいたい。お菓子を分けあったり、何処かへ出掛けたり。
そんな当たり前の事がしたいよ……
陸の肩越しに、月が見える。まだ満月じゃない、でも三日月でもない、少し不恰好なお月様。
月の灯りが私たちを、静かに優しく照らしていた。
「――――兎月……」
突然、陸は何かを決心したように顔を上げた。
私から離れ一歩後退ると、真っ直ぐに見つめる。彼の頬に涙のあとがついていた。
「兎月、俺を食べていいよ……」
「え……?」
「俺を食べろよ。そうすれば兎月は月に帰れるし、俺もずっと一緒にいられる……」
私の血となり肉となり、それでも一緒にいられるからと陸は笑う。
はあ、と苦しくなった息を吐きだすと、私の目から涙が溢れた。