「……ああ、勇樹……猫か何か、かと思ってたけど…………」

「お、思ってたけど……?!」

「――――女の子だ……」


 バタバタバタっと、後ろの人間が走り去るのとほぼ同時だった。目の前の人間が後ろの人間に私の事を伝えたけど、どうやら後ろの人間はそれを聞く前に走り去ってしまったようだ。


「……後ろの人、逃げてっちゃったわよ」

「みたいだな……」


 取り残された人間は、呆れたようにはあ、とため息を吐いた。


「貴方は、怖くないの……?」

「怖い……けど、君は人間だろ……?」

「まあ、お化けじゃないけど……」


 ……鬼、だけどね。


「君も……肝試しに来たのか?」

「肝試し? そんなのじゃないけど……私、ここに住んでるの」


 私の言葉に、その人はもう一度驚いて目を見開いた。


「ごめん! じゃあ、君の方が怖かったよな……俺たちが勝手に家に入ってきちゃって……! 泥棒とか、怪しい者じゃないから! ここ、ずっと空き家だったから……それで……!」


 必死に弁明する人間が、何だか滑稽で面白かった。私がそれでクスクス笑うと、その人はやっとホッとしたようだった。


「……ほんとにごめん。クラスの奴らにも言っとくよ。ここはもう空き家じゃないって」

「うん、そうしてくれると助かる。ありがとう……」