「……陸、離して」

「ダメだ! 離したら兎月、お前は……!」

「……私ね、もう人間は食べないって決めたの。だから、満月になったら死ぬんだよ……それが少し早くなるだけ……」

「そんなのダメだ!」


 陸は、まるで駄々っ子みたいに私にしがみ付く。鬼の姿の私はきっと怖いだろうに、それでも離してはくれない。

 でも……陸の腕の中は温かくて気持ちがいい。


「……兎月、俺……お前が好きだ。人間じゃなくても、鬼でも、好きなんだ……」




 ――――好き




 ああ……そうか。

 陸の言葉に、私はやっと納得出来た。自分のこの感情が何なのか、ずっと不思議に思っていたんだ。

 お母さんが言っていた『情』とは少し違う。

 陸の事を考えると、胸がドキドキしてお腹がポカポカして。嬉しくて笑いたいような、悲しくて泣きたいような、そんな気持ち。


 ――――私もきっと、陸が好きなんだ……


 鬼と人間の間に、こんな感情が生まれるなんて思っていなかった。だから分からなかったんだ。分かってみたらスゴく簡単で納得。

 好き。私も陸が大好き。

 だから、死ぬんだ――――