――――いつの間にか私は、そのまま眠ってしまったみたいだ。頭上には夕焼けで赤くなった空。猫は家に帰ったのか、いなくなっていた。
もうすぐ日が暮れる。暗くなったら洋館へ行ってみようかな。
陸が来たのか、様子を見に……
やがて夜の帳が降り空に星が瞬き始めると、私は丘を下り洋館へ向かった。
坂を下ってしばらく歩く。下の方に洋館の屋根が見えてくると、異変に気がついた。敷地に生えている木々の間から、何かの光がチラチラと見えるのだ。
何だろう、あれは……
近付くにつれ、話し声もザワザワと聞こえる。それも一人や二人じゃない。もっと大勢の人間の声。
木の陰に隠れながらじりじりと近付くと、大勢の人間の中に勇樹の姿を見つけた。もしかしたら陸もいるのかもしれない……
彼の姿を探す為、もう少し近付こうと足を踏み出した瞬間、腕を何かに掴まれた。驚いて振り返ると、そこには――――
「――――陸……!」
「……しっ! そっちへ行っちゃダメだ。勇樹たちはお前を探してる」
「……どうして? 一体何が……」
私の問いには答えずに、陸は自分の口に人差し指を当てた。これは静かにしろというゼスチャー。
「……とにかくここを離れよう」
私が無言で頷くと陸は手を掴んだまま、来た道を戻り始めた。